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小田切博「どこかで誰かが」第1回『挿絵画家の時代―ヴィクトリア朝の出版文化』清水一嘉

本というのは、どんなものでもなにかしらおもしろく読めるものだ。

もちろんなにが書いてあるかまったくちんぷんかんで読んでも毛ほども意味がわからない本というものも世の中には存在するが、それは読む側にその本を読むための接点、「どう読めばおもしろいか」がわかっていないだけなのだと基本的には思う。

小難しい専門書や読みづらい技術解説書の類でも必要がありさえすれば人間無理やりにでも読んだりするものだし、結果として書いてあることに対して何がしかの感想を抱く。そうやって抱いた感想や興味の蓄積がその人なりの「おもしろがり方」をつくりだしている。

そういう意味で本というのはすべて「どこかで誰かが」おもしろく読んでいるものなのだろう……これはそういう「どこかの誰かにとっておもしろい本」の話だ。




『挿絵画家の時代―ヴィクトリア朝の出版文化』

清水一嘉(大修館書店、2001年)

この本の著者である清水一嘉は東北大の英文学教授である。専門はイギリス文学、イギリス文化史で、主に19世紀イギリスの出版文化に関する研究をしている。

英文学の研究者といっても、清水の研究は作品論や作家論ではなく、歴史資料を基に文学とそれを生み出す時代、社会の関係とを語ることに力点が置かれた非常に実証的なものだ。そのため主題になっているのは、出版社や出版エージェント、書店や貸本屋、読者といった文学、小説を支える下部構造、インフラストラクチャーの部分である。

私ははっきりいって英文学にも19世紀のイギリスにもほとんど興味がなく、そういう人間相応に碌な知識も持っていないのだが、このひとの本は愛読している。どれを読んでもおもしろいからだ。

イギリスの貸本屋の実態や初期の小説出版がどのようなものだったか、小説の内容と出版状況との相関関係などがきわめて具体的なエピソードやデータによって語られていく清水の本は読者にトリビアルな知識を与えるだけのものではなく、当時の英国のひとびとの生活を活き活きと感じさせてくれるその著作自体が一級の文芸読み物である。

しかし、そもそもまったく自分と接点のない分野の研究であり、書き手なので、二年ほど前まで私はこのひとのことはまったく知らなかった。

その頃私は『キャラクターとは何か』という新書に書いたことの下調べのようなことをしていたのだが、現代のアニメやマンガのキャラクターマーチャンダイジングの起源のようなものを考えていくうちに文学研究、美術研究における挿絵の歴史に当たる必要があるのではないか、とひどく胡乱なことを考えるようになっていた。

ここ数年私は(たいして仕事をしているわけでもないのだが)なんとなくマンガについて書いたり、考えたりしていることが多い。

もともとアメリカンコミックスの紹介記事を雑誌で書くところからお金をもらって原稿を書くことをはじめたので、マンガについて書いたり考えたりするのは原点みたいなものだが、考えれば考えるほどその肝心の「マンガ」がなんだかだんだんわからなくなってくる。なんとなく国内の先行研究や文献でそういうことはすでにすっぱり整理されてるものだと信じていたのだが、きちんとそれらの資料に当たり始めてみたらどうやらそんなことはぜんぜんないことがわかってきたからだ。

特に美術や文学、出版史とのかかわりからマンガの起源を考える作業はじつはあまり国内のマンガ研究では関心を持たれてこなかったらしいことがわかり、そんなめんどくさいことはまったくやりたくないのだが、まじめに考えるなら文学史や美術史をある程度紐解く必要があるような気がしてきていた。

仕方がないので図書館に行ってなにかまとまりがよくてわかりやすそうな挿絵についての参考文献を探してみたところ、幸運にも最初に突き当たったのがこの『挿絵画家の時代』だったのである。

これは『オリヴァー・トゥイスト』におけるイギリスの文豪チャールズ・ディケンズと挿絵画家ジョージ・クルックシャンクのあいだに起きた対立を軸に据え、ヴィクトリア女王時代(1837~1901年)のイギリス出版界での挿絵と挿絵画家の役割、あり方の変遷をつづったものだ。特にメインのディケンズとクルックシャンクの逸話はミステリ的な興味すらそそられる印象深いもので、前述の新書を書く上でも非常に大きな示唆を受けた。

具体的にそこからどういう示唆を受けたかは気が向いたら私の本のほうを読んでいただきたいが、この本を読んで以降、私は清水の本を愛読するようになった。

じつをいえば相変わらず英文学にはたいして興味がないのだが、19世紀イギリスの社会の中でのひとびとの生活や制度、文化との関連の中に文学や小説の起源やあり方の変遷を見ていく清水の姿勢、方法は、私自身がマンガを考える際に非常に参考になるものだ、という気がしている。



プロフィール:小田切博 フリーライター。著書『誰もが表現できる時代のクリエイターたち』、『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』(ともにNTT出版)、『キャラクターとは何か』(ちくま新書)。共編著『アメリカンコミックス最前線』(大日本印刷)。

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